「池袋にチャイナタウンを!」

日本僑報社日中交流研究所所長

段躍中氏が在日中国人と池袋で講演

 

在日中国人の居住に変化

池袋は結節点となれるか

 

《リード文》

 「池袋にチャイナタウンを!」――立教大学第18回グローバル都市研究会は、このほど同大キャンパスにおいて日本僑報社日中交流研究所所長の段躍中氏を講師に招き、「近年の在日中国人の居住実態の変化――結節点としての池袋」と題する講演会を開催した。段氏は中国新聞社のデーター(2008年1222日)を活用しながら、在日中国人と池袋の位置づけについて解説した。

 

《本文》

■在日中国人は75万人

 段氏は来日後、東京都豊島区、新潟県、埼玉県と転居してきたが、10年後に再び東京都豊島区に戻った経緯に触れ、「池袋は原点であり、思い出の地。緑も多く、特に立教大学は自分の庭のように感じている」と語り、中国人の居住実態について解説した。

 まず、在日中国人の人口は現在75万人を超え、増加の一途を辿っており、定住者も43万人を超す。また、在留資格は日本国籍取得が10万5813人となり、2006年から9%増加している。永住許可は13万1487人で、この内訳は永住許可が2006年から10・4%増加の12万8501人、伸び率は9・5%。特別永住許可は2986人となっている。また、定住許可は3万3816人で、1・5%増加。日本人配偶者は5万6990人(2・0%増加)、永住者配偶者は5215人で21・2%増加となっている。

■全国に中華街拡大

 在日中国人の居住地分類では、まず、中華街区域(横浜中華街・神戸南京街、長崎新地中華街など)があげられる。例えば横浜中華街は観光地としても有名。600数軒の中華料理店と中国物産店があり、毎年1800万人もの観光客が訪れる。しかし、最近は新しい商業中華街が誕生しつつあるとし、お台場小香港(東京都港区)、立川中華街(東京都立川市)、大須中華街(愛知県名古屋市中区)、大阪上海新天地(大阪府大阪市)などをあげた。

 このほか残留孤児・婦人及びその子孫が集まって住む残留孤児区域として京都市伏見区向島ニュータウン(400戸強)が有名。さらに共通した特徴を持っていない雑居区域として埼玉県大宮市東宮下団地(1270戸のうち、中国国籍144人)があげられる。また、ホワイトカラー区域(高学歴・高収入)として埼玉県川口市芝園団地をあげた。同団地は人口5265人中外国人が1168人で、この95%以上が中国人となっている。家賃は3DKの場合で月額8万3500円から10万8600円で、入居には月収25万円以上が条件となっている。

 

新中国人街「池袋」注目

なぜ中国人が多く住むか

 

■孫文と密接な関係

 新しく誕生した中国人商店街区域として池袋をあげ、この池袋には中華料理店150軒以上。このほか中国物産店、旅行社、スーパーマーケット、カラオケ、美容院、学校、託児所、在日中国人企業、不動産会社、メディア等に携わる中国人が主となっている。ちなみに総数は300数軒にのぼる。

 このほか大阪市鶴見区では、中国人朝市が有名。日曜日早朝に多くの露店が軒を連ねる。商品は中国食品が主。臭豆腐、月餅、ヒマワリの種、中国の缶詰、キクラゲ、八角、五香粉等が多い。ほかに中国産DVD、VCD、義侠小説、中国語新聞、国際テレホンカード等があげられる。

 また、新しく誕生した中国人の商業貿易地区区域として、神戸市による「新たな中国人街」があげられる。この中国人街は南京町とは異なる組織で、ビジネスや貿易の「特区」として位置づけられている。この「特区」では留学生を起用して創業を促進すること、震災復興後、低迷する神戸経済改善の一助とするための取り組み。現在13企業中、元中国人留学生が創業した企業は11企業にのぼる。その多くは医療、IT関連のハイテク企業となっている。

 ここで段氏は「なぜ池袋に中国人が多く住むか」という疑問を呈し、その理由を次のように解説した。まず、「歴史的背景」については「戦前からの日本と中国の関わり」の存在をあげた。池袋に住んでいた宮崎滔天は1905年、中国同盟会を孫文らと結成し、辛亥革命の立役者となった。宮崎は自宅を中国革命家の黄興に貸したこともある。

■日中交流の拠点

 一方、現在の池袋は日中交流の拠点として注目されている。例えば滔天会(世話人代表=滔天の孫の宮崎蕗冬)の講演会が池袋で定期的に開催されているほか、2007年には浙江省中華老舗企業日本展覧会が池袋サンシャインシティ文化会館で開催されたことをあげた。

 池袋の特徴として段氏はまず居住する在日中国人が多いことをあげた。在日中国人が最も多い区(外国人登録者数=平成20年7月東京都のデータ)は江戸川区で9562人、次いで新宿区9285人、豊島区8657人となっている。豊島区の外国人登録者数中では中国人が55%を占め、最も多い。このほか中国人の通勤通学者が最も多いことも特筆される。

 こうした池袋について段氏は「新宿区歌舞伎町は中国人が多いことで知られているが、あまりイメージが良くない。しかし、池袋は安全で面白い店舗も多く、情報量も豊富。中国人向け新聞、雑誌、物産展などが圧倒的多数を占める。池袋で活躍している中国人は2万人はいる。衣・食・住・教育・メディア・カラオケ店・IT企業など、その分野も多岐にわたる。特に日中の経営者の中華店は100件以上にのぼる。このほか不動産経営者も多い。中国語で免許の取れる自動車学校や床屋も少なくない。その意味で在日中国人が情報を収集し、発信する拠点となっている」と強調した。

 

「東京中華街」構想が浮上

地元商店街「まず交流から」

 

■地元商店街は渋い顔

 こうしたところから近年、池袋の中国人が見直され、共生の街――チャイナタウン構想が浮上してきた。具体的には共生と発展を目的として東京中華街促進会「東京中華街構想」は発足した。日本人たちの四川大地震被災地への寄付や国際緊急救援隊に感謝し、池袋にある華人や華僑が経営する店への長年の日本人の愛顧を感謝するため、「東京中華街」の準備委員会を5月18日の午後35人を動員して「池袋駅」周辺でタバコの吸殻を拾うなどの清掃を行ったという。

 しかし、地元商店街からの反発が起こったという。「安心して楽しめる街をと、長年努力してきた地元の頭ごなしに、一方的に池袋を中華街と呼ぶ考えには賛同できない」と中華街構想に再検討を求めてきた。08年8月28日付けの朝日新聞は『池袋「中華街」構想 商店街渋い顔「まず交流から」』との見出しで中華街構想問題を取り上げた。

■負のイメージ払拭を

 東京中華街構想が地元商店街からの反発を受けていることに対して段氏は「地元に敬意を表し、指南となる対話の必要性を説き、神戸市による『新中国人街』を一つの参考に行政・市民・華僑が三位一体となり、推進していくことを提起するとともに、相互交流を強化していく必要性を訴えた。

 しかし、地元商店街では「中国系店舗は地元町会に加盟する店はほとんどなく、街灯の電気代など共有設備の費用負担もしてこなかった。数年前まではゴミの出し方などで苦情を寄せられていた」という。

 段氏も参加者の質問に答える形で「街灯の電気代も払えないようでは地元商店街との交流が進まない。財力も含めてリーダーシップを発揮し、中国人のネットワークを構築できる経営者の誕生が望まれる」とし、偏った情報から生まれた中国人への負のイメージの払拭に努め、実体を正確に発信していく必要性を訴えた。具体的には池袋で活躍する中国人、とりわけ社長クラスの講演会の実施、単行本の発行。立教大学、豊島区、その他と共催のシンポジウムの開催などを提起した。

 

2009113日「人民日報(海外版)日本語週刊・日中新聞」より、日中新聞社特別提供